やさしいがんの知識

がんで死亡する人は本当に増えているのか?

現在、日本人の死亡原因の1位はがんによるものです。人口10万人当たりのがんの死亡率は、戦後ずっと上昇を続けています。一方死因の第1位であった脳卒中のほうは、死亡率がどんどん下がってきて、昭和56年には、順位が逆転しました。このことからがんは増加を続けているという印象を持たれている方が多いのではないでしょうか。しかし、年齢別にがんの死亡率を見てみると各年齢層ともがん死亡率は、ここ20年程、ほとんど横ばい状態なのです。同年齢の1人1人について比べると、昔の人に比べて、がんで死亡する率は決して上昇していないといえます。 これは、高齢になる程、がんによる死亡率が高くなるため、人口構成が老齢化して、高齢層の人たちによるがん死亡が増加を続けているために、日本ではがんによる死亡数が上昇しているのです。

3人に1人ががんになる時代?

全死亡者数の4分の1はがんのために亡くなっています。がんになった人のうち、数十パーセントは治癒して生きているわけですから、当然がんになった人数は死亡した人数よりももっと多いことになります。 確率的には、今後、よほどの状況の変化がない限り、私たち日本人全体のほぼ3分の1、すなわち3人に1人は、一生のうちに一度はなんらかのがんにかかる時代に突入しようとしています。 これは、めったにおこらない、火事やホールイン・ワンよりも高い確率なのです。

日本人に多いがん

日本人のがんの発生部位をみると、従来は胃がんが一番多かったのですが、最近では肺がんが増加し、平成5年以降男性の肺がんによる死亡は胃がんをぬいてトップになっています。昭和40年頃から男女とも胃がんの死亡率は減少し始め、他のがんの増加と反対の傾向をみせています。これは集団検診等の早期発見、早期治療の普及によるものといえます。

早期発見すればこんなに治ります

がん治療のためには、何と言っても早期発見、早期治療が大切。がんの治療は、手術切除が一番の基本です。内視鏡や特殊なレントゲン撮影の進歩によって早期診断が可能になり、大方の人が手術を受けられるようになりました。胃がん、大腸がん、子宮がん、乳がんなどの早期がんはほとんど100%治っています。今までは治り難かった肺がんや肝臓がん、膵臓がんなども、早期に発見さえすれば手術で完全に治すことが可能になります。

がん治療効果の測定には、治療開始後満5年経過して生存している割合が用いられます。
5年生存していれば、ほぼ完全に治癒していると判断されます。

第1期(早期がん) 91.90%
第2期(進行がん) 76.20%
第3期(進行がん) 47.70%
第4期(末期がん) 8.10%

がんは一種の習慣病です

食事内容やタバコといった生活習慣の違いががんの発生頻度を変え、発生しやすいがんの種類をも変えます。 よって、日常生活に気をつければ、ある程度がんを予防することができるのです。

がんを防ぐための12ヶ条

  1. バランスのとれた栄養を摂る
  2. 毎日、変化のある食生活を
  3. 食べ過ぎをさけ、脂肪を控えめに
  4. お酒はほどほどに
  5. たばこは吸わないように
  6. 食べ物から適度のビタミンと繊維質のものを多く取る
  7. 塩辛いものは少なめに。あまり熱いものはさましてから食べる
  8. こげた部分は避ける
  9. かびの生えたものに注意
  10. 日光に当たりすぎない
  11. 適度にスポーツをする
  12. 身体を清潔に

この12ヶ条を積極的に実行すれば、がんの約60%が防げるだろうと専門家たちは考えています。

参考文献:近藤誠著「「がん」ほどつき合いやすい病気はない
平成6年 人口動態統計の概況
がんの統計93
がんの統計95
財団法人がん研究振興財団「がんを防ぐための12ヶ条」
財団法人がん研究振興財団「やさしいがんの知識」


Search